[2003年3月に開催された社会言語科学会の研究大会で、以下のようなワークショップを企画しました。-- 西阪]
近年、いわゆる機能言語学の一部を中心に、文法という考え方そのものを、実際のやりとり(言葉をもちいた相互行為)の詳細な分析をとおして捉え直そうという動きがある。このワークショップでは、この動きに呼応しつつ、いわゆる会話分析(Conversation Analysis)が文法概念の再構築にどう貢献できるかを考えてみたい。文法が、文を構築するやり方の知識(ルール)であるとするならば、実際の相互行為のなかで文がどのように組み立てられているかを具体的に見ることから、文法を捉え直していこうという発想は、わたしたちにはしごくもっともなことに思える。実際の言語使用において個々の文がどう構築されるかは、相互行為が相互行為参加者たち自身によりどう組織されていかということと無関係ではありえないと思う。たとえば、E. A. Schegloffは、実際の会話のなかで発話の順番がどう構築されるかに注目することで、文そのものというより発話順番を構築するやり方として、文法概念を拡張することを提案している。一方、実際の会話を吟味することから文法(あるいはルール一般)の規範性をすくいとることが可能かどうか、という問題がありうる。会話分析が、いわゆる機能言語学とも違ったしかたで文法概念の再構築のために何をなしうるか、これを測定してみたい。
ワークショップの構成: 最初に話題提供者の三人が、言語学的文法理論の関心と重なると思われるいくつかの事柄(語順の多様性、文法的単位の構成、文の構築、文法化など)について、会話分析固有の観点(発話順番のデザイン、相互行為の組織化など)から、具体的な会話データの分析にもとづいて問題提起を行なう。ついで、二人の討論者がそれぞれ教育学および社会学(エスノメソドロジ-)の立場からコメントする。その後、すべての参加者で議論をしていきたい。そのさい、話題提供から全体での議論にいたるまで、すべての議論があくまでもデータに繋ぎとめられるよう、話題提供はいくつかの限定されたデータに焦点を当てていくことになる。
このワークショップは、前回の大会でのワークショップの続編であるが、可能であれば、指定討論者の数を増やすことも検討したい。